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【後編】ダヴィンチインターナショナルで世界を股に掛けるソーセージ職人になった男の物語。

ドイツでマイスターを取得した古塩祐士さん(右)と、(株)ダヴィンチインターナショナル 代表取締役/松居 温子(左)。

前編はこちらです

 

そして留学2年目、本場のソーセージ作りそのものに携わり始める

2年目になると、いよいよ具体的なソーセージ作りに入る。

それまでは個々の指示に必死になって対応していましたが、「一連の流れを理解できるようになった。」と古塩は振り返ります。ソーセージ作りの面白さとともに、具体的なソーセージ作りで何が大変なのか、何が難しいのかが分かるように。マイスター(親方)は、日本から来た若者を温かく見守り、丁寧に指導してくれていました。

 

人は同じではない。自分は自分らしく、生きていればいい

2年目に実施される中間試験も、マイスター自ら準備の指導をしてくれた。

マイスターは、研修生が自分で考えて行動する力を養っているという感じでした。その中でも嬉しかったのが、1年目のうちから頑張っていることを見てくれていて、ソーセージ作りそのものに携わらせてもらったことです。モチベーションを高めるきっかけをもらっていたことは、とても感謝しています。

ドイツで働くうちに、ドイツ人ひとりひとりが全員違う考えを持っていて、堂々としていることに気づいたと話す古塩。「人は同じではない。自分は自分らしく、生きていればいい、と気付きました。

 

人種も違えば、価値観や生き方も違う。誰と話しても面白い。

たくさんの人の考えを知りたくなるので、ドイツ語の力も自然に伸びていきました。」ドイツ人は議論好きとしても知られています。「ドイツ語で主張ができるようになると、古塩に興味をもってくれる人が現れ、どんどん人とのつながりができ、ドイツでの生活が次第に楽しくなっていった。」と古塩は話します。

ドイツと日本では時間に対する考え方が異なることについても、
古塩は教えてくれました。

ドイツ人は時間を本当に大切にしているということも分かってくるように。日本に帰国しても、友人と会えるのは週末だけなのが一般的で、平日は仕事で目いっぱい。誰も相手にしてくれないのが普通でした。

しかし、「ドイツ人は、平日でも仕事が終わった後でもプライベートの予定が詰まっている。ドイツ人は、仕事が終わった後の自分のフリーな時間を一番大切にしている。」という事に気づきます。

 

毎週金曜日になると、職場での盛り上がる話題は週末の過ごし方。

家族や恋人とどこへ行くか、何をして過ごすか。」「月曜日には、どこへ行ってきたか、何をしたか。」で話に花が咲いていたという古塩。

そんな彼は、マイスターから自分のやっている仕事や作業の意義と意味を何度も聞かされたようです。

「僕の場合、日本では上司に色々と質問しても「こう決まっているから。」「とにかくやって!」と言われることが多かったんです。でも例えば、日本では公務員や医者、弁護士の方が精肉店の店主よりも偉いなど、職業上の地位で上下関係があるようなイメージですが、ドイツには職業での上下はなく、ひとりひとりが自分自身の職業に誇りを持っています。どんな職業の方もおいしいソーセージを買いに来ます。職人を自分の分野以外の仕事に携わっているスペシャリストとして、互いに尊敬し合っているように感じました。

 

研修3年目。いよいよゲゼレの本試験。

3年目になると、すでに工房でも色々なことができるようになってきた古塩。実際の本試験の準備も、いちいちマイスターから声をかけてもらって指導してもらえるわけではなく、準備も基本的には自分一人で行い、わからないことや指導が欲しい場合には、自分からマイスターに質問するまでに成長したと言います。

一人前になるために必要な能力ということで、研修生自らが行動を起こして準備を進めていきます。一人前になるための自覚を促されていたような感じです。本当にいい職場に恵まれました。

 

2019年7月にドイツの国家資格「ゲゼレ」の本試験を受験。

試験時間は7時間。時間内にすべての課題を仕上げなければなりません。課題は、牛の背中からももにかけての解体と分類。ウィンナーの製造。お肉を紐でしばる巻物づくり。焼くだけでおいしく食べられる料理の飾り切りを添えた一品と、さらに料理をもう一品。料理は基本、パスタなどどんな料理でも良いのですが、1種類の料理を2人前作る必要がありました。

ウィンナーの製造は、ネットで充填して燻製まで一人で行っていたと言います。

 

 

結果は見事合格。

ゲゼレ試験の成績は、「1」から「6」まであり(ドイツでは「1」が一番良い成績)、最終的には「2」を獲得した古塩。「1」にほんの少し届きませんでした。
「成績には、『1』から『6』まであり(ドイツでは『1』が一番良い成績)、本当は『1』をとりたかったのですが、最終的には『2』でした。実はもう少しで『1』だったんです。ただ、時間内にもっている力を出し切ったといった気持ちなので、悔いはないです。」

 

この時「ミュンヘン校では全員の中でYujiは最優秀成績を修めたんだよ」とマイスターが誇りをもって語ってくれました。

 

ドイツで働いた3年は自分にとって大きな財産になり、自信にもつながりました。極端な話、日本のどこの企業でもやっていけるくらい自信があります」と古塩は語ってくれました。

 

自分の「志事(しごと)」を見つけ、自分の力で手に入れた古塩の表情には迷いがない。

日本では、ソーセージのコンサルタントとして、自家製ソーセージを作りたいホテル、企業、工房に対して、ソーセージのレシピや作り方などを提供する仕事を考えています。」と話す古塩。さらにしゃぶしゃぶやすき焼きといった、日本独特の薄切りにスライスした食肉を海外へ紹介するビジネスモデルも検討中だと言います。

日本でどのようなビジネスチャンスがあるか、多くの引き出しができた自分にこれから何ができるのか、自分が日本の食肉市場を見て、どのように感じるのか、まずはそこから始めるという彼。

 

古塩は、「ダヴィンチインターナショナルのドイツ研修プログラムに参加して、なりたい自分になりました。」としっかりとした口調で言います。ドイツで「Ausbildung(アウスビルドゥング/職人・職業人訓練)」を受けて、日々成長していく自分を実感できたのだと振り返ってくれました。

自分の「志事(しごと)」を見つけ、自分の力で手に入れた古塩の表情には迷いが一切無いように感じられました。ゲゼレの資格を取得した、本場帰りのソーセージ職人の活躍にますます注目が集まっています。

 

前編はこちらです

この記事を書いた人:井上茉里奈

ツイッターアカウント @JJOMD0428
大学4年在学中 / 動画編集の株式会社GEKIRIN / オウンドメディア編集長 / DMM子会社でインターン→フリーランス校閲者→編集長になりました
gekirin